世界に誇れる建築
2019.01.21
前回の話にちょっとつづきますが、
奈良の東大寺
そのスケールと技術は、まさに現代でも日本が世界に誇れる建築です
話は少し変わり
昨年、中国での老人施設の設計案件で上海出張の際、市街の中で黄金に輝く『静安寺(せいあんじ)』を見学しました
由緒あるお寺で、建て替えてはいるものの、その歴史はざっと1800年とのことです
さすが中国です
この建物を見学した際、スケールは違いますが、「東大寺っぽいな」と感じたのを思い出しました
大仏殿の空間、天井の架構、軒下の扇垂木・・・などなど
でも、似ているのは当然なのかもしれません
現在の東大寺は建て替えられておりますが、建立時は宋から技術を得たのですからね
海外から様々に技術を受け、独自に変遷させて、多様な日本的寺社建築が出てきたのです
さて、さらに話は変わり、
先月、東京オリンピックに向けて建設中の新国立競技場を、近くで見る機会がありました
あれほど着工前に「間に合うか!」と騒がれておりましたが、工事風景はなんとなく大丈夫そうに見受けます
ここで、ふと思いました
ザハハディド氏の計画案だったら、この眺めはどんなだっただろうと
もちろん賛否がありましたが、その是非はここではふれません
ただ、当時ザハ案への批判は、
「技術的に難しい」「コストが高い」「景観がそぐわない」などなど
さらにザハ氏は、自らの案が白紙撤回されて半年ほどで突然お亡くなりになりました
デザインの奇抜さから世界で「アンビルド(建たず)の女王」と言われたザハ氏の遺作が日本の技術で建設できていたら
あの曲線がここに出現していたらと思ってしまいました
東大寺創建時も、これまでない技術で挑むうえでは、様々な葛藤や難関があったことでしょう
壮大なチャレンジが実行しづらい現代の時勢も当然ありますが、残念ながら昨今、東大寺の様に100年単位で語られ、維持される建築が出来にくくなっている事を感じております
たらればですが
もしザハ案が完成していたら、
東大寺とまではいかなくても、のちに世界へ胸をはり語れる建物としては十分だったのではないかと、ちょっと思うのでした
Y.K